マーケティングにテクノロジーを、DMPやMAが強い味方に

2020.06.25

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(株式会社マルケト、パートナー・アライアンス部の鈴木仁さん=東京都渋谷区、2018年12月27日取材)

マーケティングにテクノロジーを活用
DMPやMAがマーケターの武器に
事業全体の最適化を支援、株式会社マルケト・鈴木仁氏

これまでのデジタルマーケティングでは、ファーストパーティーデータ(消費者の名前や性別、住所、アンケート結果など自社が独自に収集できる情報)からターゲットを絞り込み、ダイレクトメールを一斉配信するなどに留まっていました。しかしFacebookやInstagramといったSNSのユーザーが拡大したことで、企業が多くの消費者にアプローチできる媒体(チャネル)が増加。広告の配信枠も多様化するなどして、マーケティング活動の領域が拡大しています。一方、24時間365日情報にさらされる消費者は、欲しい情報を欲しいタイミングで受け取ることを望んでいるため、最適な人に、最適なメッセージを、最適な媒体で、最適なタイミングに配信しなければ、顧客を獲得することは難しくなりました。

デジタルマーケティングを行うチャネルが増える中、企業は限られた人員や費用で効率的にマーケティングを展開しなければなりません。そこで役立つのがマーケティングオートメーション(MA)やデータマネジメントプラットフォーム(DMP)です。MAはマーケティング担当者による設定の下、新規顧客の獲得施策や既存顧客向けのエンゲージメント施策、またLTV(顧客生涯価値: 取引を通して、一人の顧客が企業にもたらす利益の合計)の最大化などを手助け。一方DMPは、顧客の情報や行動データを格納・分析したり共通の特徴やニーズを持ったグループに分類(セグメント化)したりするデータベースとなり、これらはマーケティング担当者の強力な武器となります。

デジタルマーケティングサービスの国内市場に関して、株式会社矢野経済研究所が実施した調査によると、2016年では、MAのサービス市場規模が245億4,500万円。またMAのサービス市場とDMPのサービス市場を合算したデジタルマーケティングの市場規模は303億1,500万円で、パーソナライズされたマーケティングの効率化などを求め、データ主導のマーケティングを行えるソフトウェアの需要が拡大しているといいます。さらに22年に同市場は639億円に達し、16年から22年までの年平均成長率(CAGR)が13.2%になると予測しています。

顧客のターゲティング、DMPでより精緻に

DMPにはプライベートDMPとパブリックDMPがあり、前者は顧客のファーストパーティーデータを集約したデータベースで、後者はサードパーティーデータ(他社のウェブサイトに関するアクセスデータなど自社が収集できない情報)が蓄積されたデータベースを指します。自社が収集したデータを蓄積するプライベートDMPは、既存顧客のデータ分析に適しているため、主に企業と顧客の関係を高める施策で力を発揮。一方パブリックDMPは、不特定多数のインターネットユーザーに関する膨大な情報などが含まれているため、新規顧客の獲得を狙う広告施策に強みを持ちます。

例えば弊社のグループ企業、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社が開発したDMP「AudienceOne®」は、見込み顧客をセグメント化する機能として活用するだけではなく、サードパーティーデータとしても活用することができます。月間4.8億ユニークブラウザ(一定の期間内にウェブサイトを訪問した重複のないユーザー数)による計1兆の行動履歴などから導き出した豊富な推計データを持ち、データの量はパブリックDMPの中で国内最大級。高所得者が占める割合を郵便番号ごとに割り出した「エリア別富裕層データ」や、ネットユーザーがウェブサイトにアクセスした位置を可視化する「高精度位置データ」が入っており、広告施策などで活用することができます。プライベートDMPとの連携も可能で、データやシステムを統合すれば一気通貫したデジタルマーケティングを可能にします。

DMPを用いたセグメント化によるターゲティングを行えば、すぐに顧客が獲得できる訳ではありません。どのような内容の広告やメッセージを、どのようなタイミングで打ち出すか。いわゆるマーケティング活動のシナリオ設計も重要になっています。特に購買に至るまでの期間が長い不動産や車などの高額商品に関しては、見込み顧客が商品やサービスを認知し、興味や関心を持ち、他社の商品と比較し、そして購買や申し込みに至る一連の流れが複雑で、細かなシナリオ設計が求められます。つまりセグメント化した各ターゲットに対して、各々のニーズに沿ったメッセージなどを適切なタイミングで配信し、購買意欲を高める作業(ナーチャリング)が必要になるのです。また昨今はチャネルが複数あるため、配信媒体も考慮しなければなりません。

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(図1:マルケトの統合プラットフォーム=同社提供)

増えるMAの役割、経営者らの業務もサポート

データ収集、見込み顧客らのセグメント化、広告やメッセージといったクリエイティブ作成、各チャネルの配信設定、顧客からの返信内容やページ閲覧数の確認など。デジタルマーケティングを担う社員の仕事は広がっています。そこで登場するのがMAです。MAは見込み顧客のナーチャリングで重要となるシナリオ設計を自動化し、最適なタイミングでメッセージを自動配信するなどして、マーケティング担当者の業務を支援。また商品サイトへの訪問はプラス5点、メールの開封はプラス1点といったように見込み顧客の行動に即して加点方式を決めたり、執行役員やマネージャーなど行動の主体によって加算点を変更したりすることもでき、見込み顧客の購買意欲を自動的に一定の基準で数値化(スコアリング)します。さらに企業が持つ複数のチャネルとMAを紐付けることで、顧客一人一人に合ったメッセージ配信も可能になります。

メールを使ったマーケティング活動の最適化で活用されることが多いMA。株式会社マルケト、パートナー・アライアンス部の鈴木仁さんによると、その果たす役割は増えているそうですが、最大限に活用している企業はまだまだ少ないといいます。例えば同社のMAには、経営者やマネージャーらが活用できる「収益ライフサイクルモデラ」と呼ばれる機能があり、企業のビジネス全体をサポート。商品やサービスの購買に至るまでのプロセスを細かく分けてビジュアル化し、どの階層にどのような見込み顧客がどれくらいいるのか、また各部署がそれぞれの階層でどのようにパフォーマンスを発揮し収益にどれくらい貢献しているのかなどを視覚化します。そして広告配信を行う宣伝部や商談を行う営業部などがそれぞれ把握していた顧客を一元的にMAで管理することで、経営者らに対して、各部署への人的資源や予算の効率的な配分を促します。鈴木さんは「収益ライフサイクルモデラはマルケトの強み」と強調し、同機能をもつ理由について「(マルケトには)個別キャンペーンの最適化ではなく、事業全体の最適化を支援したいという思想がある」と説明しました。

 

 

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(図2:MAやDMPの連携について語る鈴木さん)

MAとDMP、連携し統合デジタルマーケティングを推進

MAの導入は単体でも画期的な機能を果たしますが、DMPなどと連携すると、より統合的にデジタルマーケティングを推進することができます。例えばAudienceOne®などのパブリックDMPを利用し、広告を配信するなどして見込み顧客を獲得。その後、MAを使い一人一人に合わせたコミュニケーションをとれば、認知から獲得までの施策を効率的に展開することが可能です。またMAを活用してナーチャリングしたロイヤルカスタマー(自社の商品やサービスを継続して購入している顧客)らに関して、DMPなどで行動や属性を分析。パブリックDMPに格納されたサードパーティーデータから類似するターゲットを抽出すれば、ロイヤルカスタマーになる可能性が高いターゲットに対してピンポイントで施策を打つことができます。こうしたツールの連携に関して、鈴木さんは「MAはあくまで、顧客一人一人に合ったマーケティング施策を展開するのが役目」と前置きし、「デジタルマーケティングを推進するにはDMPなどとの連携も重要」と語ります。

「伝統的なマーケティングとデジタルマーケティングの境界をなくして、マーケティング施策を実践することが求められている」鈴木さんは、テクノロジーの活用を前提とした新しいマーケティング手法の必要性を主張します。さらに「マーケティングソリューションを提供する企業でも、MAやDMPなどのテクノロジーを連携させて活用し、認知や獲得に関する一貫した施策を提案している企業は多くない」と強調。この状況を踏まえた上で、鈴木さんは「デジタルマーケティングエージェンシーの中でもアイレップさんは、統合的なデジタルマーケティングへの取り組みに対して先進的 。テクノロジーをつなぎ、統合デジタルマーケティングを一層推進してほしい」と期待を寄せました。

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この記事の著者

DIGIFUL編集部

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