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今回のコムスンの件で、多くのメディアの方からお問い合わせを頂いています。
今回の件は、
1:・不正請求 → 虚偽申請
2:・処分逃れ → 指定取り消しの直前に廃業届け
が発覚し、
3:・新規及び更新指定不許可処分 → グループ内での事業譲渡
と発展。
先に述べておきますが、決してグッドウィルグループ(GWG)・コムスンを擁護するつもりではありません。
1に関しては法令違反であり業務改善だけでなく行政的なペナルティが適当です。
また、2の処分逃れに関しては会社経営の姿勢が問題です。
3については、私個人としては可能性としてはありだと思っています。この点については、実は大変難しい点がありますので、後ほど述べます。
現在、テレビを中心としたメディアに、折口氏が登場されています。
しかし、議論のレベルがあまりにも稚拙です。折口氏というより、メディアのレベルです。
今回の問題について、グッドウィルグループ(GWG)そしてコムスンの経営姿勢について糾弾されるのは当たり前です。
しかし、ここ数日のメディアでは「介護はビジネスにするべきではない!」という論調になってきていると感じています。
GWG・コムスン=ビジネス となっているようです。
今回の問題については
◆一企業の問題ではないのではないか?
◆根本の原因はなにか?
という方向へも視点を広げ、根本の原因、構造的な課題へ掘り下げるべきです。
GWG・コムスンの経営手法・営業手法、また折口氏の過去のキャリアばかりを追及するのはそろそろ終わらせて、
・介護保険ではなぜ儲からないのか?
・儲からない分野をなぜ民間企業が担っているのか?
・介護をビジネスでやって成功している企業はないのか?
・介護に従事しているスタッフの低賃金についてどうなっているのか?
・どうやったら介護スタッフの賃金は上げられのか?
という点を議論して頂きたい。
「介護事業に携わるには、気持ちが大事であって、ビジネスとして携わるのはいかがなのものか?」
という内容のコメントが多く出ているが、
介護にビジネスの視点や手法を取り入れて「介護ビジネス」として取り組まなければ、これからの日本はだれが守っていくのか?と問いたい。
介護に携わっている方の現状をもっと取り上げるべきなのです。なぜ、こんなにもがんばっている方々の報酬が少ないのか?20代の男性が結婚し子供を創りたいと思っても、月収が20万に届かない。決して、会社が略取しているわけではないのです。構造的にお金が入りにくいのです。
お金がなければ、介護事業は続けられません。
お金がなければ、スタッフは長く働けないのです。
極端な話として、生活できないのが実情なのです。
(※今回の件を肯定しているわけではありません。)
このような構造に問題があるのです。そこに注目して頂きたい。
■最初に述べた、GWGの出したセーフティネットとしてのグループ内での事業譲渡についてです。
介護事業は規模の経済が活かしやすい産業です。
介護事業を展開するにあたって重要なのは、「お客様の獲得(営業)」、「スタッフの採用」です。
専門性を重視して単一事業を小規模で展開するのも一つの方法でしょう。しかし多くの課題が残ります。
たとえば、グループホームを一ヶ所のみで展開する。
しかし、そこで働くスタッフは規模としてキャップ(限界)があり、給与は上がりません。長期雇用の条件として、低賃金が続きます。また、ポジション(立場)のアップは見込めません。新たなポジションが作られない限りずっと、介護職員は介護職員のままです。
人にはそれぞれ「やりがい」の感じ方はさまざまです。それは介護に携わる方でも普通の業種と同じなのです。介護に従事する方は聖人君子のような人ばかりで、生活レベルの向上のためのお金や出世には関心がないという、ありがた迷惑な勘違いをしてはいけません。
もちろん、お金以上の遣り甲斐がなければこの仕事はできないのも事実です。
また、健全な野心を持っている方もいらっしゃいます。しかし、そこで働くとした場合 最初から限界が見えてしまっています。
そのようなことを考えれば、利益の追求を目的とした事業成長ではなく、スタッフの成長(=お客様の満足度の向上)を目的とした事業成長があってしかるべきなのです。
そう考えれば、居宅事業を展開し、デイサービスを展開し、グループホームを展開し、訪問看護を展開、有料老人ホームを展開することのメリットが生まれます。
働くスタッフは、がんばれば より一層の責任を求められるポジションが用意でき、スタッフの成長のチャンスが生まれます。
また、一人のお客様のニーズにスムーズに応えることができき、且つ新規にお客様を獲得することのコストも低減できます。
また、スタッフの採用という面でも、同一エリアで複数の事業所を展開することで1名あたりの採用コストも低減できます。その分、次の事業展開やスタッフ教育へ投資できます。
そう考えると、複数の介護事業を一定のエリア戦略(ドミナント戦略)で展開してきていたのならば、切り分けることでのデメリットが大変大きい。
ただでさえ、収益率が低い事業で採用コストが増大してしまうようなことは致命的です。
金融機関は小規模のうちには融資や投資はなかなかしていただけません。ある程度の規模がなくてはいけませんが、その規模までもっていくにはビジネス的な手法やセンスが重要です。儲からない事業に融資・投資はしにくいのは当たり前です。
ビジネスという言葉が、私欲を満たす利益追求 というようなニュアンスで使われているように感じますが、お客様に喜んで頂きスタッフが成長できる土台作り、維持のためにビジネスが必要なのです。もちろん、リスクをとった人間に対してリスクをとらなかった人以上のゲインがあってもよいと思います。
長くなってしまいました。
要は、今回の問題は一企業の問題だけではなく、介護産業の抱える構造的な問題が大きく影響していると捕らえて、分析して頂きたい。
ちなみに----
もしコムスンの事業を分割して譲渡するという流れになった場合、「施設介護」には申込が殺到するでしょう。介護事業の中ではもっとも利益がでる(もうかる)分野です。また、施設介護の代表的な「有料老人ホーム」(特に関東)は総量規制に伴い、新規開設が困難な状況です。そのため、事業拡大を目指していて、総量規制によって当初の予想とズレが出てきている新規参入事業者達にとっては、ありがたい話ではないでしょうか。
メディアにおいても、なぜ施設介護は人気でそれ以外は不人気かを追いかけていただきたい。
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