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カテゴリー:コラム

データ分析の自己目的化を防止する(前編)

データ分析の自己目的化を防止する(前編)

(執筆:杉山 郁也)

データ分析を使って成果を上げるためには、目的に沿った分析をすることが重要です。最先端の技術を使って高度な分析をしたとしても、目的に沿わない分析であればただの自己満足だという厳しい見方もあります。一方、データ分析ならではの特徴ゆえに、目的が曖昧なままプロジェクトが進行したり、プロジェクトが進行するにつれて当初の目的から逸れたりするケースが多いのもまた事実です。本連載記事では、データ分析の実務またはそのマネジメントという観点からマーケティングに携わられている、または今後携わられる可能性がある皆様に、目的に沿った分析をすることの重要性、及び目的を見据えて分析プロジェクトを遂行し、その結果を意思決定の判断材料として適切に活用するためのポイントをお伝えします。 

※注本記事に記載のある「データ分析」という単語は、マーケティング分野で行われる機会が特に多い、意思決定の判断材料を創出するための分析を指すものとします。アルゴリズムの組み込みやダッシュボード構築等、業務効率化や意思決定の迅速化を主な目的とした分析は含まないものとします(なお、業務効率化を目的とする分析においても、本記事の内容は部分的に当てはまります)。

はじめに 企業におけるデータ分析を取り巻く現状

データ分析は多くの企業にとってより身近になっています。「ビッグデータ」という言葉がもてはやされ始めて5年あまりが経ち、分析を行うツールやサービスを提供する企業が急激に増えた結果、様ざまな企業が様ざまなツールを使用して分析をするようになりました。また、データ分析技術の基礎から応用までを学習できる書籍やオンライン講座が多く登場し、データ分析の技術を個人でも向上させやすくなりました。

一方、データ分析により成果を生み出せている企業は必ずしも多くありません。「分析に時間と労力を割いたにも関わらず、分析結果から得られた示唆が意思決定の場で相手にうまく伝わらず、分析が無意味なものに終わってしまった。」「他部門から寄せられる様ざまな要求を整理できず、社内のデータ分析組織が闇雲にそれらへ応え続けた結果、真に重要な要求に対して十分なコミットができなかった。」という声も挙がっています。実際に、独立行政法人経済産業研究所の実施した調査でも、計539社の企業のうち約70%の企業においてデータ活用による具体的な成果が得られていないという結果が示されていました。

図:企業におけるデータ利活用を通じた成果創出状況(N=539)(https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/18j028.pdf より作成)

データ分析がより身近になったにも関わらず、何故このような状況が発生するのでしょうか。

この理由として、データの取得・管理が適切に行われていないことに加え、分析が自己目的化していることが挙げられます。データの取得・管理が適切に行われた状態で分析手法やツールを高度かつ正確に利用しても、手法やツールの利用のしかたや分析結果から得られた示唆が当初の目的に沿ったものでなければ、プロジェクトを通じて成果を上げることは難しいでしょう。そして、データ分析プロジェクトには、プロジェクトの進行とともに意図せずして目的を見失いやすい独特な特徴があります。

分析プロジェクトの特徴

データ分析プロジェクトには、
① 想定した結果が出るかどうかが実際に分析をするまで分からない
② 具体的な成果が第三者にとってイメージしづらい
という特徴があります。

まず①について簡単な例を挙げます。ディスプレイ広告のクリエイティブをユーザーごとに出し分けたことがWebサイトへの流入やコンバージョンに与える影響は、実際に分析をするまで分かりません。想定通り、流入やコンバージョンが促進されたという結果が得られるかもしれませんが、想定通りの結果が得られない場合も多いでしょう。

さらに、分析の結果を意思決定に活かすためには、意思決定につながり得る具体的な根拠を用意する必要があります。具体的な根拠を用意するためには、想定した結果が得られた、または得られなかった原因を、分析結果に応じて都度考える必要があります。つまり、分析を終えるまで次にすべきことが必ずしも明確にならないのです。見方を変えれば、分析の結果次第でプロジェクトとして次にすべきことがいかようにも変わり得るという意味で、データ分析プロジェクトは極めてボトムアップな動きをするプロジェクトだとも言えます。

また、②はツール導入のプロジェクトと比較するとイメージしやすいでしょう。ツール導入プロジェクトにはツールという明確な成果物がありますが、データ分析プロジェクトの成果物は、意思決定の判断材料という抽象的なものです。ゆえに、データ分析に馴染みの薄い方にとっては、どのような形式でどのような粒度の判断材料が成果物として生み出されるのかがイメージしづらいのです。

分析プロジェクト実施の流れ

上述①・②のような特徴があるため、データ分析プロジェクトではプロジェクトの途中経過を関係者間で共有し合い、プロジェクトを通じて伝えるメッセージや最終的なアウトプットイメージを、プロジェクトの進行に伴い徐徐に具体化する必要があります。実際に、データ分析プロジェクトの進め方に関して「CRISP-DM」(CRoss-Industry Standard Process for Data Mining)という考え方があります。約20年前に提唱された考え方ですが、現在でも通じる考え方です。

図:CRISP-DM概念図

この図で一番重要な点は、様ざまな工程を行き来するという点です。つまり、各工程における検討事項を厳密に固めてから分析(上図における「Modeling」)を1回だけ行うのではなく、分析を含む様ざまな工程を繰り返しながら徐徐に最終的な成果物を生み出す、という流れでプロジェクトを進めるという点です(システム開発における「アジャイル開発」に近い考え方です)。

例えば、実際のデータ分析プロジェクトでは分析を基礎集計・本分析に分ける場合が多いです。すなわち、データの傾向をつかむための基礎的な集計を行ったのちに、ビジネス課題やデータに対する理解を踏まえて、本分析を想定通り行えそうか、本分析の際に考慮すべき要因は何か、といった内容に対して関係者と合意を取ってから本分析を行います。また、本分析では最初にシンプルな分析で結果を出したのちに、その結果を踏まえてより複雑な分析を追加で行う場合が多いです。なお、プロジェクトでは期間が決められているため、限られた期間の中でどこまで複雑な分析を行うかは都度検討する必要があります。

このように、様ざまな工程を繰り返しながらプロジェクトを進めることにより、上述①・②のような分析プロジェクト独特の特徴を踏まえたうえで、意思決定の判断材料として有用な成果を生み出せます。

分析プロジェクトの自己目的化が起きやすい理由

しかし、上述の進め方には難しい点があります。それは、様ざまな工程を行き来する間に、当初の目的が見失われやすいという点です。工程を行き来する際は立場・バックグラウンドの異なる関係者とのやり取りが発生しますが、その際に互いの認識のズレが生じると、プロジェクトの進行とともに認識のズレが大きくなり、目的が曖昧になった状態でプロジェクトが進行したり、最終アウトプットが当初の目的から逸れたりするため、分析が自己目的化しやすくなります。

このような認識のズレは、プロジェクトを遂行する中で、当初の目的に照らし合わせて目の前の業務を捉える俯瞰的な視点を持つことで発生を防止できます。また、俯瞰的な視点はプロジェクトのマネジメントに関わる方だけでなく、関係者全員が持つことが重要です。特に、前述の通り分析プロジェクトにはボトムアップな動きをするという特徴があるため、分析の実務担当者に近い立場の方が俯瞰的な視点を持つことが特に重要です。

続編の記事では、俯瞰的な視点を持ち、分析の自己目的化を防ぎながらデータ分析プロジェクトを進行させるための具体的なポイントを説明いたします。

アイレップのデータ分析サービス

目的に沿った分析を自社だけで行うことが難しい場合は、ベンダー、コンサルティングファーム、広告代理店等にご相談を持ちかけてはいかがでしょうか。例えばアイレップでは、データ活用に関する戦略の立案から各種ツールを使用したレポーティングまで、幅広く支援をさせていただいております。マーケティングに関する様ざまな分野の専門家がいるため、様ざまな目的のプロジェクトを有機的に推進できる点が強みです。また、本記事では触れておりませんでしたが、分析に使用するデータを取得するための基盤整備の段階からご支援をさせていただくことも可能です。お問い合わせフォームより、問合せをお待ちしております。

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